こんにちは。逆転のWEBコンサル・アフロです。
2〜3週間前にキングコングの西野亮廣さんがまた「宗教ビジネス」をしていると叩かれていました。
知らない方のために簡単に説明すると、
西野さんがサロン会員に「映画のシナリオ台本&前売りチケット」を3000円で卸し、金額を上乗せして売っていいという代理販売を行なっていた。
そしたら、
何者にもなれずに苦しんでいる「無職の若者」が、失業保険使ってチケット台本を80セット(約24万円)買った。
全然売れなかった。
代理販売は普通の手法だが、在庫を持たせて自分は確実に儲かりやすいようにしていることが「悪質だ」「宗教ビジネスだ」と叩かれた。
という話です。
在庫を持たせるところはさておき、私は近年よく使われる「宗教ビジネス」という言葉が非常に安易だなと思っています。
叩くときには便利だけど、ビジネスの本質や今の世の中の流れを見誤ることにつながる言葉だと考えています。
なぜなら「宗教」って実は定義が曖昧なんですよ。
大学の宗教学の講義で、宗教の定義は100以上あると聞いたことがあります。
だから「宗教ビジネス」とか「信者ビジネス」ってすごく解像度の低い言葉なので、物事を考える上では安易に使わない方がいいんです。
宗教はそれぞれによって目的も雰囲気も全然違います。
大企業就職・湾岸タワマン・高級お寿司・ハイブランド・芸術や音楽・ダイエットや美容。
極端な言い方をすれば、広義では人が信じるものはすべて宗教です。
信仰の対象に実態がある・なしを問わずです。
だって、湾岸タワマンは都心へのアクセスという利便性だけでなく、「湾岸に住んでる人はイケてる」というイメージを売ってます。
ダイエット業界は「痩せてる人がイケてる・痩せると人生良くなる」というイメージを売ってますから。
イメージという優しい言葉を使いましたが、きつい言葉にするなら「幻想」ですよね。
だから、宗教っぽいものを目にしたときにビジネスマンとして大事なのは、
「それを信じることでその人たちは何を得たいのか?」
を考えることだと思います。
なぜならそれこそが「ニーズ」というビジネスの種だから。
「需要」や「マーケット」という言葉に置き換えてもいいでしょう。
で、私が西野さんの目の付け所が最先端だなと思ったのは、
いま人々が
「何を得たいのか」
「信じられる対象を見つけて、何を得ようとしているのか」
をよく分かってると感じたからです。
それは「アイデンティティ」です。
今日はそのことについて、歴史的な文脈を交えながら説明します。
この記事を読むと、今の世の中の流れとビジネスチャンスがすごくクリアになりますよ。

日本における「個人の時代」の起源

今はインターネットが発達して「個人の時代」と言われますが、そもそも「個人」という概念が日本に入ってきたのは明治維新の開国からです。
欧米における個人主義の起源や発達した経緯は諸説あるのでここでは割愛しますが、
とにかく欧米では古くから「個人」という概念が浸透していました。
でも、日本では明治維新までは「家」という概念が社会の中心にありました。
家父長の統制下で家業を営み,家計をともにする生活共同体としての「家」がありました。
だから、自分がどう生きていきたいか、何をしたいか、自分は何者なのかなんて、考える必要がなかったわけです。
家のために生き、家長の言う通りにすればよかったわけですから。
そこに突然「個人」という概念が持ち込まれて影響力が強くなり、「家」という概念の存在が弱まっていくから、まあ大変です。
急に「お前は何者だ?」「何がしたい?」「どう生きたい?」なんて聞かれてもパニックになりますよね。
自分の存在を証明したり確立することができず、不安と孤独を感じていきます。
明治〜昭和に「個人の時代」が意外に進まなかった理由

ただ、女性はまだまだ外に出て働くよりも結婚して「家」を守るという生き方が大半でした。
「家を守る母」というアイデンティティが残っていたのです。
そして男性には、「会社」という新たな居場所として機能する共同体が発達していきます。
昔の経営者は「社員は家族」と言っていましたし、
終身雇用・社員寮・社員旅行など、日本の会社は欧米企業よりも「家」に近い要素を持ちながら発達していきました。
また、婚姻率も高い状態を維持したので、まだまだ「家」と「会社」が自分の居場所であり、存在を証明するもの(アイデンティティ)として機能していたわけです。
「個人の時代」におけるビジネスチャンス

しかし、インターネットが普及して、個人の力はさらに強くなりました。
テクノロジーの発達によって便利になり、選択肢が増え、娯楽も発達すると、集団に依存せずとも生きていけるようになります。
集団意識は薄れ、「個人」としての意識が強くなり、個人の欲望や主張が暴走するわけです。
また、テクノロジーの発達によって社会の変化は加速し、企業は柔軟性を求められるようになりました。
そうした背景から、終身雇用や結婚という固定的な慣習は崩れていき、「会社」や「家」という共同体(コミュニティ)が一気に弱くなりました。
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でも、人はコミュニティなしで生きていけません。
人は所属するコミュニティ(学校・会社・家・その他組織)によって自分を証明し、コミュニティが居場所となります。
では、今の人々、特に若者はどのコミュニティで自分を証明すればいいのでしょうか。
どのコミュニティを居場所にすればいいのでしょうか。
今の時代に人々が抱えている最大の悩みは「孤独感」であり、「アイデンティティ」と「居場所」のどちらかあるいは両方を提供することが求められている。
これこそが今のtoCビジネスにおける最大のホットスポットである。
西野さんの一連の活動を見ていると、良くも悪くもこれをよく分かっているなと感じます。
このトレンドは今後も続くのか?

- テクノロジーによって個人の力が強くなってる
- 個人の欲望や主張が強くなっている
- 家や会社などの既存のコミュニティが弱くなってる
- 同時に個人が抱える孤独感も強くなってる
- 人々はアイデンティティと居場所を求めている
というのが近代社会〜インターネット社会のトレンドな訳ですが、感覚的には2019年あたりに一巡したかなと思っていたんです。
ところがこのトレンドをもう一段階加速させる、予期せぬ出来事が起きました。
「新型コロナの感染拡大」です。
新型コロナの感染拡大によって、様々な活動や行動が制限され、リモートワークも普及しました。
大学生だってリモート授業が増え、部活やサークルも制限されています。
「自分は◯◯社のアフロだ!」
「自分は◯◯大学のアフロだ!」
と実感しづらくなっているわけです。
また、仕事でもプライベートでも人と接する機会が劇的に減ったので、独身の一人暮らしだと、特に緊急事態宣言中は家に一人でいる時間は相当増えるでしょう。
孤独感・アイデンティティ・居場所への渇望は一層強くなるわけです。
もちろん長い目で見ると一時的なものかもしれませんが、現状でいうとインパクトは絶大でした。
音声SNSのclubhouseがいま爆発的に流行し始めたのも、もちろんプロダクトが優れていたという前提はあるにせよ、そうした背景も大きいと思っています。
もちろん発信側にとって
「普段絡めない人とコラボできる」
「コメント機能がないので叩かれにくい」
「使いやすい」
などの魅力はあります。
一方で聞く側に目を向けると、広がった理由は「コロナ禍でさみしいし暇だから」というのがブームの追い風になったと思います。
音声ってすごく人を身近に感じますし、動画を見るより手軽ですからね。
まとめ

話が広がりすぎたのでまとめます。
悪質なビジネスや手法を取り締まるのも大事ですが、
宗教っぽいものを見たら「これを通じて利用者は何を得たいのだろう?」と考えることが、新しいマーケットの発見につながります。
そして今のトレンドは、
- テクノロジーによって個人の力が強くなってる
- 個人の欲望や主張が強くなっている
- 家や会社などの既存のコミュニティが弱くなってる
- 同時に個人が抱える孤独感も強くなってる
- 人々はアイデンティティと居場所を求めている
です。
「アイデンティティを付与する」
「居場所を提供する」
「承認欲求を満する」
、これを抑えて設計すると、どんなビジネスでも成功確率が格段に上がります。
それは、店舗・コミュニティ・物販・企業メディアもそうですし、YouTubeチャンネル・SNSアカウント・個人の副業やスモールビジネスでも同じです。
個人の生き方を考える上でも大切です。(結婚とかね笑)
少し抽象的な話も多くなりましたが、参考になったらうれしいです。